「帝国」ロシアの地政学 「勢力圏」で読むユーラシア戦略 小泉悠 2019/06/25 東京堂出版

「帝国」ロシアの地政学 - 株式会社 東京堂出版 限りなく広がる知識の世界 ―創業130年―

FROM

丹羽宇一郎 戦争の大問題 丹羽宇一郎 東洋経済新報社 2017/08/04 - いもづる読書日記

アジアの中の日本―司馬遼太郎対話選集〈9〉 (文春文庫) 司馬遼太郎 文藝春秋 2006/11/01 - いもづる読書日記

かくしてモスクワの夜はつくられ、ジャズはトルコにもたらされた 二つの帝国を渡り歩いた黒人興行師フレデリックの生涯 白水社 ウラジーミル・アレクサンドロフ 著 2019/09/26 - いもづる読書日記

今般のウクライナ戦争に関する本も多数出版している著者ではあるが、旧著を読んでみた。2019年刊だが現在も変わらないロシアの戦略が描かれる。2014年のウクライナ危機(クリミアの併合)、バルト3国、シリア、北方領土北極海でロシアがとってきた行動が材料となる。ロシアあるいはプーチン大統領の「主権国家」感について、著者はこのように書く。「政治・軍事同盟に頼る国は同盟の盟主(『上位の存在』)に対してどうしても弱い立場に立たざるを得ず、それゆえ完全な意味ででの主権を発揮できないということだ。」(59ページ)「ある大国が周辺の国々に対して権力関係を行使しうるとき、そのエリアは勢力圏と呼ばれることが多い。(中略)すでに述べたロシアの主権観に即して言えば、大国=『主権国家』を中心とするヒエラルキーの及ぶ範囲が勢力圏であるということになる。」(68ページ)ウクライナはロシアの勢力圏であるという意識、日本は主権国家ではないという認識がわかる。そして、「ソ連崩壊後、『ロシア』の範囲をめぐって試行錯誤を繰り返したのちにロシアが見出したのは、旧ソ連諸国を消極的ではあっても『勢力圏』として影響下に留めることであった。このような論理の帰結が2014年のウクライナへの介入であり、それに続く西側との対立の再燃であったと言えよう。」(262ページ)