B.C.1177 ─古代グローバル文明の崩壊 エリック・H・クライン著 2018/01/25 

筑摩書房 B.C.1177 ─古代グローバル文明の崩壊 / エリック・H・クライン 著, 安原 和見 著

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海の地政学──海軍提督が語る歴史と戦略 ジェイムズスタヴリディス 早川書房 2017/09/07 - いもづる読書日記

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エーゲ 永遠回帰の海 立花 隆 著 , 須田 慎太郎 写真 筑摩書房 2005/11/1 - いもづる読書日記

紀元前12世紀に後期青銅器文明が終焉した。「主たる客観的事実 1数多くの独自の文明が、前15世紀から13世紀にかけてエーゲ海・東地中海で繁栄した。ミュケナイおよびミノア、ヒッタイト、エジプト、バビロニアアッシリア、カナン、キュプロスがそれである。これらは独立していたが、とくに国際貿易ルートを通じてたえず相互作用をおこなっていた。2明かに、前1177年ごろかその直後に、エーゲ海、東地中海、エジプト、近東において、多くの都市が破壊され、当時の人々が知っていたような後期青銅器時代の文明と生活は終わりを告げた。3これまでのところ(中略)なにがこの大惨事を引き起こし、ひいては文明の崩壊と後期青銅器時代の終焉をもたらしたのかはわかっていない。」(249ページ)この原因として、地震、飢饉、内乱、侵入者、国際交易の損害を挙げられるが、いずれの原因も単独で文明の崩壊を説明できない。著者は「複雑系理論」で説明できるかもしれないと考えている。また、「全域にわたる黙示録的な終末を想像するよりも(中略)後期青銅器時代の末は、混沌とした、しかしゆるやかな崩壊の時代であったと考えるほうが適当かもしれない。」(255ページ)という著者の指摘も重要である。「侵入者」は「海の民」と称されるが、その来歴もまたわかっていない。かつていわれたドーリア人の南下は後年のことであり、文明崩壊とはなんの関係もない。海の民にはイタリア半島南部の出身者が交じっていた形跡が指摘されているが、「さまざまな地域から集まってきた海上の敵」(237ページ)でありその文化は折衷的だったという考えもある。この時代は地中海の西部は後進地域だったのだろう。