古代史疑増補新版 松本清張 中公文庫 2017/2/21

古代史疑 -松本清張 著|文庫|中央公論新社

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倭国の時代 岡田英弘 筑摩書房 2009/02/01 - いもづる読書日記

TOKYO REDUX 下山迷宮 デイヴィッド・ピース 2021年08月24日 文藝春秋 - いもづる読書日記

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松本清張〈倭と古代アジア〉史考:アーツアンドクラフツ

日本の黒い霧 - Wikipedia

原著は1968年に出版され話題になったらしい。興味深い点は多々あるが、卑弥呼の立体的な造形がいかにも作者らしい。魏志東夷伝から朝鮮各地に鬼神を祀る風習があることを指摘した上で、「こうした天を祭る習俗は北方から、シベリア、蒙古、満州、朝鮮、日本へと入ってきたのだろう。このルートは、ウラル・アルタイ系のツングース語文法の道と一致する。」(118ページ)「長い間抑圧された憂鬱不活潑な陰性状態から急に解放された爆発的活動は、陽性状態となり、巫事を行うことで癒るという。こうした巫行をロシヤの女流民族学者ツァップリカは北極ヒステリーと命名しているという。」(120ページ)シベリアのシャーマニズム音楽を思った。
結語も終わり近くなって、やや唐突に江上波夫、水野祐の「騎馬民族説」へのシンパシーが語られる。「(水野説では)騎馬民族の侵入は南九州に向って行われ、そこに狗奴国という一部族連合国家を形成した。これが女王国を制し、九州に『九州国家』といったものをひとまず作った。それは応神天皇の時代であったろう。そして大和には前からの古い国家であるところの崇神王朝があった。(中略)継体によって初めて二つの異系が統一されたではないかという前提に立つ」(250ページ)騎馬民族征服説は、戦後という解放期を背景に興ったと言われるが、保守化した現在の言論界でこうした思い切った言挙げが可能か疑問だ。ところで、「日本の黒い霧」も読みたい。