一億三千万人のための『歎異抄』 朝日新書 高橋源一郎 2023年11月13日

朝日新聞出版 最新刊行物:新書:一億三千万人のための『歎異抄』

FROM

親鸞への接近 四方田犬彦 工作舎 2018/8/24 - いもづる読書日記

萩尾望都がいる 長山靖生 光文社新書 2022年7月13日 - いもづる読書日記

書き換えられた聖書 バート・D・アーマン 著 ちくま学芸文庫 2019/06/10 - いもづる読書日記

証し 日本のキリスト者 最相葉月 KADOKAWA 2023年01月13日 - いもづる読書日記

TO

伊藤比呂美の歎異抄 :伊藤 比呂美|河出書房新社

歎異抄がここまでコンパクトな本だとは思っていなかった。誤読するなというのが無理じゃないだろうか。著者の訳文は平易だが原文を正確にうつしているのがわかる。だが、これをもとに何でも語れそうな気がする。冗長度が足りないとでもいおうか。
巻末の「宗教ってなんだ」で著者が本書を書いた理由が明らかにされる。若い頃に活動家の近親憎悪に触れて、人間の奥底に届く言葉をもとめて親鸞に興味を持ったと綴ったあと、カール・バルトの幼児洗礼批判に対するオスカー・クルマンの言葉を引用している。「バルトの『信仰とは神との一対一の契約であるという考え方』は素晴らしい。けれども『実のところ、それは信仰ではない』と言ったのである。(中略)キリスト教の信仰とはなにか。まず最初に神からの愛の一方的贈与があるのだ。」(172ページ)そうして、「正しそうなものには気をつけた方がいいのだ」まで至っている。
以前、外国人に鎌倉仏教を説明しようとして、こりゃルターじゃないかと思ったことがあった。上記のクルマンは親鸞のようだ。宗教は弱いものを強くする。では、初源の宗教家は弱くあらねばならないのか。業が深くない凡夫の私には、それが救いなのか呪いなのかわからない。