夜の歌 なかにし礼 毎日新聞出版 2016年11月25日

なかにし礼「夜の歌」特設サイト|講談社文庫

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安井かずみがいた時代 島崎今日子 2015/03/20 - いもづる読書日記

満洲暴走 隠された構造 大豆・満鉄・総力戦 安冨歩 角川新書 2015年06月17日 - いもづる読書日記

なかにし礼の自伝的な小説。満州時代の話や兄上の話が織り込まれているが、「赤い月」や「兄弟」との関連はどうなんだろう?作詞家としての成功した著者の戦争体験、セクシュアリティ、死が主調音か。安井かずみが登場するということで読んでみた。「と見ると、笑い顔の中に、ひときわ険しい目付きがあった。かずみの視線だった。それは怒りにひきつっていた。」(345ページ)イイネ!
職業作詞家作曲家ということを考えた。「私はシャンソン訳詞稼業をやめる決心をした。(中略)街にはビートルズの『抱きしめたい』ががんがん流れている時代ではあったが、シャンソンには(中略)ある勢いがまだ十分にあった。」(75ページ)「さらば青春の光」という映画がある。ホームパーティらしいシーンで、悲しき街角(1961)を止めてマイ・ジェネレーション(1965)が掛けられるのが印象的だった。ウェルメイドのポップスから、パンッキシュなロックンロールへの価値転換だ。日本で認識の薄いザ・フーを例に引くのは極端だが、抱きしめたい(1963)が後者の文脈で受け入れられていたのは間違いない。本作にも登場するかまやつひろしがその後自己破壊ともいえるような活動を展開していったのは、この価値転換を感じ取っていたからではないだろうか?