近代日本一五〇年 科学技術総力戦体制の破綻 山本義隆著 岩波新書新赤版1695 2018/01/19

近代日本一五〇年 - 岩波書店

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電子立国は、なぜ凋落したか 西村吉雄著 2014/7/10 日経BP社 - いもづる読書日記

満洲暴走 隠された構造 大豆・満鉄・総力戦 安冨歩 角川新書 2015年06月17日 - いもづる読書日記

聖断 昭和天皇と鈴木貫太郎 (PHP文庫)半藤 一利 2006.8 - いもづる読書日記

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高度産業社会の臨界点 塩川 喜信(編) - 社会評論社 | 版元ドットコム

著者は元東大全共闘議長、ドロップアウトして予備校教師となり、科学史を中心に著書多数という人物。本書は明治以降、科学と技術を輸入することで、自国の発展を図ってきた我が国の近代史が描かれる。現代日本の産官学をめぐる構造が、戦争中の総動員体制に端を発するという論旨が明快。学振も科研費も戦中に発足した、国民皆保険制度は1938年の「国民健康保険法」に依るものだし、占領軍の農地解放も戦中の食糧管理制度に準備されたものだった。戦争に勝つために科学を振興し、戦災から復興するために科学を振興したのだ。「現実には、『科学戦に敗北した』という総括は、責任逃れにとどまらず、初めて直面した原子爆弾の異次元の破壊力と殺傷力を背景に語られることにより、それまでの戦争指導の責任、(中略)、敗戦の受けいれを先送りしてきた責任をうやむやにして、民衆に敗戦を受けいれさせるための、願ってもない口実を戦争指導者たちに与えたのである。」(206ページ)「『合理的』であること、『科学的』であることが、それ自体で非人間的な抑圧の道具ともなりうるのであり、そのことの反省をぬきに、ふたたび『科学振興』を言っても、いずれ足元をすくわれるだろう。それを私たちは、やがて戦後の原子力開発に見ることになる。」(214ページ)「福島の事故は、明治以来、『富国強兵』から(中略)戦後の『国際競争』にいたるまで一貫して国家目的として語られてきた『国富』の概念の、根源的な転換を迫っているのである。」(287ページ)